ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」(映画原題Arrival)はその映画化ということで、公開2日目に観てきた。
感想としては、総じて失敗作だろうと思った。
「あなたの人生の物語(Story of Your Life)」というこれ以上のものが考えられないようなタイトルが、映画では "Arrival"(邦題「メッセージ」)に改変されている。そして、原作で重要なシーンが、映画ではカットされている。
タイトルを変えた理由は知らないけれど、確かにこの映画はもはや「あなたの人生の物語」ではなくなっている。Arrival だろうがメッセージだろうがどちらでもいいが、この映画にはテーマというテーマがなくなってしまっている。監督はなにやら「言語の違いを超えて、世界みんなで理解しあおう」という小学生並みのテーマにすり替えている。だとしたら、「あなた (You)」のエピソードに意味はなくなるし、主人公と夫の間に起こる未来の悲劇とも矛盾する。
次に、原作からカットされたシーンとは、異星人の言語・思考形態に近づくためのヒントとなる「変分原理」の話である。「変分原理」や言語学からの観点で、異星人の言語・思考形態がいかに特殊かを自然な説得力で描いた小説に対して、映画ではファンタジー・超能力の部類に堕している。まるで、超能力の奇跡によって主人公は世界を救った、というような物語になっている。原作には、奇跡も世界救済もない。
そういう根本的な問題以外は、まあまあよくできている映画だと思う。
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